異体同心なれば萬事を成じ、同体異心なれば諸事叶う事なし|日蓮聖人【御遺文】

日蓮聖人のお言葉

日蓮宗の開祖である日蓮聖人が遺したお言葉(御遺文)は、心豊かに生きる知恵が詰まっています。

今回ご紹介するのは、『異体同心事』の一節です。

 

御遺文 原文

異体同心なれば萬事を成じ、同体異心なれば諸事叶う事なしと申す事は、外典三千餘巻げてんさんぜんよかんに定まりて候。いん紂王ちゅうおうは七十萬騎なれども、同体異心なればいくさにまけぬ。周の武王は八百人なれども、異体同心なればかちぬ。一人の心なれども二つの心あれば、其の心たがいて成ずる事なし。百人千人なれども、一つ心なれば必ず事を成ず。

・御遺文名『異体同心事』
・文永11年(1274年)
・日蓮聖人 53歳

 

御遺文 現代語訳

異体同心であれば、あらゆる事柄が成就していく、逆に身体はひとつでも心が散っている「同体異心」の状態であれば、何事も達成することができない。

それは、仏教以外の経典3,000余巻に述べられ、定説となっている。

中国の殷という国の王である紂王は70万騎の軍勢を誇っていながら「同体異心」であったために、戦に敗れてしまった。

一方で、周の国の武王はわずか800人の軍勢ながら、皆が心を一つにして戦ったため勝つことができたのである。

このように、一人の心であっても、二つの心を持っていれば、物事は成就しない。

それに対して、100人でも1,000人でも心が一つであれば、必ず物事を成就することができるのである。

 

御遺文 解説

「異体同心」とは、身体は違っても心は一つに固く結ばれていることをいいます。

日蓮聖人の周りには、不退転の決意で日蓮聖人に仕えた弟子や信徒がたくさんおりました。

しかし、様々な法難により退転し日蓮聖人のもとを離れていく人もおりました。

そういった経験のなかで、日蓮聖人は心を一つにすることで得られる力は、何事にも勝るということを弟子や信徒に示されました。

 

 

南無妙法蓮華経