地獄も仏も心の内|日蓮聖人【御遺文】

日蓮聖人のお言葉

日蓮宗の開祖である日蓮聖人が遺したお言葉(御遺文)は、心豊かに生きる知恵が詰まっています。

今回ご紹介するのは、『重須殿女房御返事』の一節です。

 

御遺文 原文

そもそも地獄と仏とはいづれの所に候うぞとたずね候えば、或は地の下と申す経もあり、或は西方等と申す経も候う。

しかれども委細にたずね候えば、我等が五尺の身の内に候うとみえて候う。

さもや、おぼえ候う事は、我等が心の内に父をあなづり、母をおろかにする人は、地獄その人の心の内に候う。

・御遺文名『重須殿女房御返事』
・日蓮聖人 60歳
・重須殿女房 宛

 

御遺文 現代語訳

そもそも、地獄と仏とはどこにあるのかと尋ねてみると、地獄は地の下にあるという経文もあり、あるいは仏は西方の極楽浄土などにいるという経もある。

しかし、よくよく尋ねてみると、地獄も仏も我々の五尺の身体の内に存在するものだということが説かれている。

なるほどと思い当たる節をいえば、我々が心の内で父を軽蔑したり、母をおざなりにする者がいるなら、地獄は他の場所ではなく、その者の心の内に存在するのである。

 

 

御遺文 解説

私たちが怒りや恨みなど、悪い感情に支配されているときは、心のなかの地獄が働いている状態だといえます。

こういったときは、悪い感情を抑えられずに他人を苦しめ、そして己も苦しみます。

まずは、私たちのなかに地獄があるということを自覚し、そういった悪い感情を抑制することが大切です。

また、他人にぶつけない努力が必要です。

一方で、仏も私たちの心のなかにいることを忘れてはいけません。

他人に対して、良い感情、仏心を持って接することで、他人の仏心を目覚めさせることができます。

私たちのなかに仏があるということを自覚し、そういった良い感情を巡らせることが大切です。

仏心を他人に向ける努力が必要です。

 

 

南無妙法蓮華経